2025.08.21コラム

食欲コントロールと健康的な減量

マンジャロは2型糖尿病治療薬としてだけでなく、肥満治療やメディカルダイエットの現場でも広く用いられています。

今回は、マンジャロの効果について以下の3つのポイントをご紹介します。

  • なぜマンジャロがダイエット効果があるのか
  • 健康的に痩せるために気を付けたい要素
  • メディカルダイエットをする際の注意点

マンジャロとはどんな薬?なぜダイエット効果があるの?

マンジャロとは、もともと2型糖尿病の治療薬として開発された薬剤(持続性GIP受容体およびGLP-1受容体作動薬)です。

アメリカの大手製薬会社イーライリリーが開発し、世界的に糖尿病治療や肥満治療に用いられています。(日本では田辺三菱製薬が販売)

ペン型の使い切り注射薬となっており、腹部や太ももに週1回投与します。

もともとは糖尿病治療のために開発されたマンジャロですが、使用した場合体内でどのように作用するのでしょうか?

以下から4つの項目にわけてマンジャロの効果を解説いたします。

血糖値を抑える

まずご紹介するマンジャロの効果は、「血糖値を抑える」というものです。

マンジャロは小腸から分泌されるGIPとGLP-1というホルモンの受容体に作用する薬剤で、どちらも血糖値に作用します。

GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド):

  • インスリン分泌の促進
  • グルコガンの分泌促進

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1):

  • インスリン分泌の促進
  • グルコガンの分泌抑制

GIPとGLP-1はグルコガン(血糖値を上げるホルモン)に対する働きは異なりますが、マウスでの検証ではGIP受容体作動薬、GLP-1受容体作動薬を同時に投与したところ顕著な体重減少が見られたというデータが残っています。

参考:Chronic glucose-dependent insulinotropic polypeptide receptor (GIPR) agonism desensitizes adipocyte GIPR activity mimicking functional GIPR antagonism

同実験ではGIP受容体作動薬単体では体重減少がほぼなかったものの、GIP受容体作動薬とGLP-1受容体作動薬を同時に投与することで大幅に体重減少したことが分かっています。

実はグルコガンは血糖値上昇以外にも食欲抑制やインスリン分泌の促進、脂肪分解促進など、様々な働きをするホルモンでもあります。

GIP受容体作動薬とGLP-1受容体作動薬を同時投与することで、血糖値は下がると考えられています。

脳に働き食欲を抑える

マンジャロは脳にも作用し、満腹中枢を刺激し食欲を抑える効果があるとされています。

マンジャロ(チルゼパチド)が直接血液脳関門(BBB)を通過するかは懐疑的な意見もありましたが、開発・販売を行っているイーライリリーの調査によると、ラットを用いた実験で脳への分布が認められています。

参考:マンジャロ(チルゼパチド)は血液脳関門(Blood-brain barrierBBB)を通過するか? | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社

こうした作用により、「以前より食への執着が減った」「少しの量で満足できるようになった」という効果を感じると考えられます。

満腹感をキープする

マンジャロはGLP-1の受容体に作用する薬剤です。

GLP-1は胃の働きを抑制し、胃の中にある食物の排出を遅らせる効果があるので、満腹感の持続が期待できます。

そのため、いつもより少ない食事量であっても満足感を覚えやすく、なおかつそれが長続きしやすいのです。

脂肪の代謝を助ける

GIPは脂肪細胞にも受容体が存在します。

マンジャロを使用しGIP受容体に作用すると、直接脂肪細胞にアプローチできるため脂肪代謝を亢進させる効果があると考えられています。

参考:肥満症にも承認されたGIP/GLP-1受容体作動薬:日経メディカル

岐阜大学が行った研究でも、GIPは食事量の低下と脂肪をエネルギーとして利用する量の増加を起こすことが分かりました。

参考:GIPは過食・肥満・糖尿病を改善することを解明: レプチン-満腹神経系を活性化する新規インクレチン治療の確立 | 研究・採択情報 | 岐阜大学

マンジャロで健康的にダイエットするためのポイント

マンジャロを使いダイエットをする際、食事・運動療法も用いて生活習慣を整えることが大事です。

体重を減らすだけでなく、健康的に生活を楽しむためには以下の点にも気を配りましょう。

運動・食事療法と合わせて行う

マンジャロは体重減少効果が期待できる治療薬ではありますが、全ての健康的問題を解決できる魔法の薬というわけではありません。

普段あまり運動しないという方でも、歩く量を増やしたり、無理のない範囲でトレーニングをしたりして、日常の運動量を増やすよう心がけましょう。

欠食をせず、バランスよく食べる

ダイエット中は朝食や夕食を抜いたり、糖質・脂質などを摂らないという人も少なくありません。

特に脂質はカロリーが高いといって摂取を避ける女性も多いですが、脂質は性ホルモンの原料にもなるため必要な栄養です。

もちろん、摂取量に気を配る必要はありますが、極端に摂取量を抑えてしまうとホルモンバランスが乱れる恐れもあります。

質の良い脂質はお肌の健康を保つ効果もあるので、揚げ物などは避けて、ナッツや魚類、オリーブオイルなど良質な脂質を取るのがおすすめです。

ダイエット中であっても、特定の食品や栄養素をカットせず、質を見直してバランスよく食べることが重要です。

摂取カロリーを削りすぎない

過度なダイエットをする上で摂取カロリーを極端に減らす人もいますが、健康的に体重を減らすためにはむしろ逆効果となります。

ダイエット中であっても、必ず基礎代謝量を上回るようカロリーや栄養のバランスを調整してください。

基礎代謝とは、生命を維持するために体内で代謝されるエネルギー量のことです。

具体的な数字は個人の体格や筋肉量、運動量などによって異なりますが、成人女性の平均的な基礎代謝量は約1,150kcalとされています。

摂取カロリーを基礎代謝量以下にし続けると、筋肉量が減って、代謝が落ち、痩せにくい体になってしまいます。

ダイエットのためによかれと思ってした努力が、長期的な視点では逆効果となることもあります。

低BMIの人は長期使用を避ける

もともとある程度痩せている人がマンジャロを使うと、副作用として過度な体重減少や低血糖などの症状が出て健康を害する可能性があります。

どうしても使用したい場合は、医師と相談の上で低用量から使用を始めるか、他の選択肢も検討することをおすすめします。

マンジャロを使ったメディカルダイエットは医師の指示の元で行おう!

クリニックに行くのは面倒だから、と最初から高容量のマンジャロを個人で購入する人もいますが、低血糖など思わぬリスクが発生する可能性があります。

マンジャロはもともと2型糖尿病の治療薬で、肥満ではない体型の方が高容量を使用することは想定されていません。

そのため自己判断で使用してしまうと、体質や体型によっては重篤な副作用を引き起こす可能性があります。

はなふさ皮膚科では丁寧な診察をした上で、ひとりひとりの体型や体質にあった容量をご案内させていただきます。

マンジャロを使ったメディカルダイエットを始めたいとお考えの方は、まずはクリニック等で医師の診察を受けることをおすすめします。

まとめ:メディカルダイエットは生活習慣を整えて健康的に行おう

マンジャロは、その効果の高さや投与の手軽さからメディカルダイエットの分野でも非常に人気の高い薬剤です。

従来メディカルダイエットで用いられていた薬剤とは異なり、GIPとGLP-1という2つのホルモンの受容体に作用するという特性があります。

ただ、高い体重減少効果が期待できる分、自分の体型に合った容量を選ばなければ、低血糖など副作用が出るリスクもあります。

健康的にマンジャロでメディカルダイエットを始めたい方は、日々の運動や食事内容も見直しつつ、医師の指示のもとで適切な容量を使用しましょう。

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